有限会社ユーアンドエス 代表取締役/ライター 恩田すみえのホームページ

コラム

2025
09 / 08
15:21

山海の恵み、栃木の鮎の美味しさよ

山海の恵み、栃木の鮎の美味しさよ

仕事で日光の近くまで来たので、日光市大渡の青木屋さんに立ち寄りました。鬼怒川に架かる風光明媚な大渡橋のたもとにある定食屋さんですが、鬼怒川の清流に耳を傾けつつ味わう鮎の塩焼きと蕎麦は絶品です。週末や祝日は蕎麦が売り切れてしまうのが常ですが、本日は平日のせいか、午後2時過ぎに伺ってもかろうじてお蕎麦は残っていました。窓際に陣取り、いつもの冷やし山菜たぬき蕎麦と鮎を一匹注文。こちらは注文を受けてから塩をまぶし焼いてくれるので、熱々の焼き立てが食べられます。やはり焼き立ての鮎は格別。青木屋さんの塩焼きは塩加減、焼き加減共に自分好みで完璧です。

 

思えば父親が釣りを趣味としていたので、物心ついた時から鮎を食べていました。しかし幼い頃は鮎のハラワタが苦くて食べられず、白身だけつついて後は残すのが常でした。でも大人になるにつれ、ハラワタの美味しさが分かるようになりました。鮎という魚は皮や骨、ハラワタに至るまであらゆる組織に特有の風味をまとっています。一口食べて、フワっと広がるあの香り。それが五臓六腑に染み渡ると、全身に力がみなぎってくるようです。

 

以前、奈良県橿原市の博物館を訪れた際、飛鳥時代の貴族の食事が再現されていました。そのひと皿に「鮎」がありました。 1400年前、栃木同様に内陸に位置する奈良県では、鮎は貴族の口にしか入らない特別な食材だったようです。飛鳥時代を生きた蘇我入鹿や中大兄皇子も宴の席で、あるいは戦の前夜、きっと鮎を食べていたことでしょう。飛鳥時代の庶民の平均寿命が30歳前後とされるなか、貴族たちは50歳を超えて生きる者も多かったと聞きます。それには鮎のパワーが一役買っていたに違いありません。

 

鬼怒川.jpg

 青木屋さんのテラス席から望む鬼怒川。日中はまだ夏空ですが、今朝は涼やかな秋空が広がっていました。上空では確実に季節が移ろいでいます。

 

そば.jpg

たっぷりの天かすを細い手打ちそばに絡めて食べる。