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コラム

2025
09 / 08
10:00

福島の桃に想いを馳せる

福島の桃に想いを馳せる

我が家の年中行事としてひと夏に2回、福島に桃を仕入れに行きます。1回目の訪問は7月末の「あかつき」が最盛期の頃。やはり王者・あかつきは甘くて柔らかくて瑞々しくて、桃の美味しさを存分に堪能させてくれます。あかつきを購入するのは、毎年決まって「あべ農園」さん。福島西ICを降りて国道115号を土湯温泉方面へ向かう途中にある果樹園で、東日本大震災が起きた2011年の夏から欠かさず通っています。

 

震災前、福島の桃は「高級品の贈答用」というイメージで、わざわざ現地に買いに行くなど考えもしませんでした。でも震災の年の6月に用事で山形県に出向いた帰り道、JR福島駅の構内で「福島の桃を食べに来てください」と、小学生が書いた七夕飾りの短冊を見つけました。きっと桃農家の子供が書いたものなのでしょう。当時は原発事故の影響で、福島の農産物が敬遠されていた時期です。ここで私のハートに火がついて「わかった。アタシが福島の桃を食べるよ」と、2011年から毎年夏になると福島に桃を買いに行くようになりました。

 

早いもので今年で14年目になりますがコロナ以前は家長のおじいちゃんを筆頭に、親戚の方々やパートさんも大勢いて、直売所の中はそれは賑やかなものでした。しかしコロナ禍になり、時を同じくし世の中全体で人手不足が騒がれるようになると、収穫期に桃農家に働きに来ていた人材が近隣の工場や会社へ流れる現象が起きはじめたようです。桃農家が人手不足で困っているといった話を聞くようになりました。

 

そういう中でも、あべ農園さんではお孫さんが家業を継いでくれました。どの世界でも家業を継ぐというのは、大きな覚悟がいることです。やめることは簡単だけど、一度流れを止めたら復活させることは容易ではありません。家族の歴史や地域のへ想いを背負って、お孫さんは決断したのだと思います。自分は常々、継続することや繋いでいくことはどこかで誰かを救う行為であり、規模の大小問わず、最大の社会貢献であると考えています。おじいちゃんが手塩にかけた甘い甘い桃の木を守っていく跡取りができたこと、本当に嬉しく思います。お孫さん、応援してますよ!(画像は福島の桃で作った桃ゼリー。母親の御手製です)

 

 

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今年2回目の桃をゲットするために、8月の最終日に伊達市へ向かいました。伊達市も桃の一大産地です。東北道の桑折ジャンクションから東北中央道を相馬方面へ入ると無料区間となり、ほどなく「道の駅りょうぜん」に到着。自宅用の桃(11,000円~1,200円!)を大量に購入しました。今は桃も様々な種類があり、品種によって9月末まで購入できます。

 

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伊達市から飯館村の「道の駅までい館」へ移動。飯館村という名称は2011年の福島第一原発事故の際、全村民が避難を余儀なくされた地域として記憶に残る人も多いと思います。避難指示が解除されたのが6年後の20173月。震災前の飯館村の人口は6200人ほどいましたが、現在は約1500人です。「までい」とはこの地方の方言で「ゆっくり」とか「のんびり」を意味するそうですが、四方山に囲まれた本当に自然豊かな美しい地域です。道の駅の駐車場脇に建てられた、ここに縁のある人々が各々の想いを詠んだモニュメントが印象的でした。

 

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 までい館内で自家製の燻製を販売していた「燻製工房 木香」の渡辺社長。ゼネコン退職後、故郷の福島に戻り趣味の燻製作りを生業とし、今年で20年ほど経つとか。とても気さくな方でお話も面白く、ついつい話し込んでしまいました。卵の燻製を味見させていただき、香ばしくとても美味しかったので購入しました!ついでにさんまとお塩の燻製も。